Conservation tour2

 2週間前に参加したBritish LibraryのConservation tourに味をしめて
今回2回目のツアーに参加。内容はこの前と違って
比較的一般的な本の修復作業の見学だ。
とはいっても、古い本やドキュメントなどさまざま。
場所も別棟の修復作業専用の建物の中。
最上階(3階)は天窓からの自然光でとても明るく、
体育館の半分ほどもあるような広い部屋で
数人のconservatorたちがきちんと片付いた机の上で
それぞれの作業をしていた。

今回のツアーには10名が参加。
お年寄りが結構多い。
案内人のMartynは前回とは違う人だ。
Francesは前回も案内してくれた。
どちらもconservatorとしてここで働いている。

まず作業部屋の見学の前に廊下にディスプレーしてある
finishing用のこてのコレクションを見学。
さまざまな縁飾りやアルファベット、
とても大きな模様やカリグラムなど
gold leafで革に押したサンプルと共に
壁際のガラスケースに並べてあった。
「これらはすべてBritish libraryで代々使われてきたものなんだ。」
とMartyn。彼の興味深い話は続く。
「ところで、タイタニック号にはとてもゴージャスな
写本が一緒に乗っていたんだ。NYのライブラリーに
運ばれる途中だったんだ。今は海の底に眠っているけど。
僕はそのコピーを見たことあるけれど
宝石がたくさん散りばめられてとても美しい写本だった。」
調べてみるとどうもその写本は
Omar Khayyamという11世紀ペルシャの天文学者で詩人による
詩集「Rubayyat」らしい。
そういえば、最近もBritish Libraryでこの本のコレクションが
いろいろ展示されているのを見た。
かなり有名な本のようだ。(私が知らないだけかも)

いよいよ作業部屋に入る。
最初に見学させてもらったのは
まだ40代くらいの男性のconservatorの作業台。
彼は20世紀初期のスクラップブックを
修復していた。
個人が収拾したと思われるさまざまなpoliticalなちらしや
集会などの資料が大き目のスクラップブックに
貼り付けてあるが、かなりボロボロな状態だ。
この当時の紙は中性紙ではないので酸化して
劣化が著しい。
ページもはずれて、汚れも目立つ。
これをすべてはがして、1枚1枚真水で洗浄し
ボロボロな紙は薄い和紙ではさんで丈夫にして
手で扱えるようにする。
このクリーニング作業、200時間もかかるそうだ。
気の遠くなるような作業を1人でこなす。
ちなみに彼は4年間ここで見習い生として働いて
正式に職人となった。
今ではこの見習い制度、なくなってしまったという。
だから、大学で修復を学んだ学生が見習いなしで
職人になるわけだが、直接先輩の職人から
技術を学べる見習い制度があったほうがいいと、
彼は言っていた。
もちろん、大学でも修復の実技は学ぶらしいのだが。

次に訪れた机の上では、女性のconservatorが
ユダヤ教の聖書の巻物を修復中。
1470年のもので、上と下の両側から読めるように
挿絵と文字が書かれているユニークなものだ。
参加者からの質問。
「文字が消えていたら上から書いたりしますか?」
Conservator「いいえ、私たちはあくまで本の汚れを取ったり、
強度を持たせたり、破れているところを修復する作業はしますが、
できるだけここに持ちこまれた状態を優先します。ですから、文字が
消えかかっていても書いたりすることはありません。」

そういえば、前回のツアーで見た本の中に、ブリキのようなスチール製の本があって、
ページがぼこぼこになっていたが、それをハンマーでたたいて
まっすぐにすることはしない、と言っていた。

次に移動した部屋は、窓際のひときわ明るい部屋で、
女性のconservatorが"Telescope of View and the thames"(19世紀)
といういわゆるトンネルブックを修復していた。
じゃばら部分がシルクでできており、とてもフラジャイルな感じ。
本を入れるボックスがかなり傷んでいた。
そのため、本体とボックスは別々に分けて収納できるような
容器を制作していた。ボックスが潰れないように支える中身
(発砲スチロールのような)を入れ、本も平たく収納する。
古くて壊れやすい本はたびたび平置き収納にするようだ。

1980年代の日記はセロテープでぼろぼろになった
背(spine)の修復がされており、それをまずはがさなければならない。
水性インクが使われているので、水で洗浄することができず、
この本はspine bindingのみが施されていた。

15世紀のlatinのMS(写本)は中の頁がかなり切り取られたりしていた。
ほとんど根元を残して切り取られたページもあり、
(昔は図書館のMSは簡単に閲覧できたので、美しいページは
このような被害によく会っている。)
その切り取った下の頁も切れてダメージを受けていた。
切られたページはどのようにくっつけるかと言うと
小さく切った(5mmx2mmくらい)和紙をピンセットで
行間に貼りこんで目立たないように切られたページを
つないでいく。
文字に重ならないように行間に貼って行く作業は
本当に細かい。糊はpaste。
扱いは素手で。手袋はかえって本を痛めてしまう。
修復作業は時に科学的な知識が必要なこともある。
素材などどのように扱っていいかわからなくなったりしたら、
サイエンティストの意見を参考にするという。
ちなみに、切り取られたページはそれ以上修復しない。
そのままの状態で保存するそうだ。

最後に訪れたのはFinishing studio。
いわゆる金箔でタイトルなどを背表紙や表紙に刻む作業だ。
この作業はここBritish Libraryのconservator50人の中でも
わずか2−3人しかできないそう。
様々なタイプフェイスが入った引き出しがついた棚がいくつもあり、
様々な書体とすべてのサイズがそろっている。
ここでは修復というよりは、新たに表紙を付けられた本たちに
タイトルを入れる作業をしている。
まず、書体選び、下書き、スペルチェック、スペーシングチェックをして、
紙に試し押し。それから、実際に押す革の状態によって
glain(革のしわ)が大きい革はスムーズにするため
熱いこてをあてて平にする。
金箔をコットンで持ちあげ(彼は額の油をコットンにつけていた)
革にのせる。
糸をピンと張って、水平ラインの印を付け、
あらかじめ組んでおいたタイプフェイスの中心から端までの
距離をディバイダーで測り、
金箔の上に印をつけ、
熱した組版を金箔の上から3秒くらい押す。
その後コットンで余分な金箔をふき取る。

熱した組版の温度調整がすごく難しそうだった。
なんどもこての先につばをつけた指をあてて、
ジュッと蒸発する感じで、こての温度を測りながら
「うーん、まだ熱すぎる」
といいながら濡れた布に当てて冷ましていた。
本当に職人技は身体で覚えるしかないのだ。

ツアー時間の1時間を大幅に過ぎ、あっという間に1時間半が
経過していた。
今回のツアーには質問をやたらする人が多く、
ちょっとまどろっこしい場面もあったが
(写本を初めてみたような人もいるので)
1度のツアーではこのくらい見るのが精いっぱいだろう。
やはり何度も通ったほうがいいようだ。

次回この国に来る機会があればまた是非参加したいと思った。
明るくて素敵なカフェにも入ってみたいし。










コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< June 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

others

search this site: