Conservation tour

以前から行きたいと思っていたBritish Libraryの
Conservation tour(修復作業見学)に
やっと参加することができた。
去年の夏思い立って調べたら、8月9月はツアーがなくて、
そのままになっていたのだ。
もうすぐ帰国なので、早いところ行っておきたい場所に
行かないと、行けずじまいになってしまう、と空いている日に
どんどん予定を入れている。

そのツアーは月に2回、第1と第3木曜日の14時から
定員8名と12名で無料で行われている。
今日も定員の8名が集まっていた。
人気のあるツアーらしい。

入口のインフォメーションデスクの前で集合。
ツアーのコーディネーターのRobertがちょっとなまりのある英語で
説明をはじめる。彼自身も修復の作業に携わる。彼のもとでは6名の
職人が働いているという。

メインビルディングの裏に新しく建った
Conservation Centre。
その前にはカフェのテーブルといすが
たくさん並んでいて、
多くの人が初夏の陽ざしの中で
くつろいでいた。
街中にしては、広くてゆっくりとできる
いい場所だ。


今日のツアーはメインビルディングの最上階(6階)
の修復作業室を見学。このビルディングでは
なかったが、終わった後にRobertが
案内してくれた。

ツアーはノートと鉛筆の持ち込みのみ。
カメラやバッグはロッカーに預ける。
20代の若いカップルから、
70代くらいのお年寄りまでいろいろな
人が来ていた。
みんなとても熱心で質問や自分の経験話
(1人ボランティアで修復作業に
かかわったことがあるというご婦人がいた)
をよくするので、時間がかかって、終わったのは
3時40分くらいだった。(1時間程度の予定が)

BLCC(Blitish Library Conservation Centre)
の入り口の部屋では、修復作業の過程がわかりやすく
解説してある。
実際の道具や工程のビデオ、音声もついている。
 


修復が必要な本のサンプル。

革を薄くする作業に使う道具。
Gold finishingの道具も。
金箔の上から模様や文字の型の
熱した金属を当てて模様をつける。

Finishingの作業に使われる道具と材料。

展示台の下の引き出しには
各工程で使う道具と材料を
わかりやすくまとめて説明が
書かれている。
これは紙の修復用道具。
ちなみに、紙の修復専門の
職人も作業チームの中に何人もいる。

ソーイングマテリアル。
カーブした針もある。

表面の汚れを取る技術。

背の修復や貼り替え作業。


本によっては、バインディングし直す
場合もある。

古いバインディングの技術。
麻の紐に絡めながら、綴じていく。

ヘッドバンド(花切れ)も糸で巻きながら作る。
修復作業では出来合いのものなど使わない。

Finishingの工程。


この部屋の奥にさまざまな修復作業の
様子がビデオで流れている。
これはパピルスの修復の様子。

ピンセットを使って、Japanese paper
を細かく切ったものをペーストで貼っていく。

パピルスは縦と横に繊維が貼り合わせてあるので
その繊維の向きに沿って、細く切った和紙(2mm×7mmくらい)を貼り、薄くなったところや
切れている場所に橋渡しするような感じで
補強していく。


和紙の繊維は長くて強いという説明があった。
世界中の修復作業を支えているのが
日本の手すき和紙なのだ。
なのに、日本では手すき和紙職人が、
どんどん減っていっている。




これはマップの修復。
上にMelenexという透明フィルムを載せて
形を取っている。

このMelenexというフィルム、修復では
よく使われているようだ。
手で直接触ることに耐えられないような
古かったり、貴重な本は、修復作業の後、
このフィルムで覆って手や空気に直接触れない
ようにしてしまう。

和紙を貼っているところ。

絵具が粉状になって剥がれ落ちそうに
なっている場合は「ふのり」を
スプレーで表面にかけて
絵具を定着させたりもする。
「ふのり」は昔洗髪に使われていたのは
知っていたけど。
ここでも日本の修復技術が活躍。

修復作業室は、整然と片づけられていて、
白衣を着た女性が、まるで科学の実験のように
作業をしていた。
ひとつひとつの工程を確実に、正確に処理する
必要があるのだから、整理整頓は当然だろう。
見習わなくっちゃ。


今回は一般的な本の修復ではなく、巨大なマップや、インドのFalk Art、
縦横1m×1,5mくらいの巨大な絵画を綴じた本とか、どちらかというと
Artの要素の強いものの修復を見学した。
案内のRobertの言葉を借りて言うと、こういうものを
"Sexy Conservation"と言うそうだ。
彼は一般的な本の修復に携わっているので、
こういう"sexy"なものの方が
見ていてとっても楽しい、と言っていた。
「どんなに珍しい中世のMSでも、毎日見ていると
飽きてしまうんだよ。」

修復作業というのは、必ずしも新品同様にするというものではなく、
どこまで手を入れて、どこまでそのままの状態を残すか、というのが
作業員の判断のしどころだ。
今回メタルでできた本の修復も見せてもらった。
スズでめっきしたスチール製の頁が綴じてある本だった。
スチールの頁がところどころ曲がっていたが、
あえて彼女は叩いてまっすぐにのばさないことにした。
「なぜなら、この状態で持って来られたのだし、多少曲がっていても
鑑賞する妨げにはならないと判断したから」と言う。
1ページずつ、Melenexの袋で覆い、壊れていたスパインを修理し、
おおきなタッパーウェアに緩衝材を入れてベッドを作り
乾燥材と湿度計を入れて、その中に保存する。
できるだけ、一般の市場にある道具を使うという。
でないと、修復作業専門の材料や道具はとても高いから。
「酸化度などいろいろなテストをして大丈夫でしたから。
口に入れるものを入れる容器として安全なら、本なら大丈夫でしょう。」
と笑って言っていた。

このConservation tourは毎月2回開催されていて、
インターネットのサイトから申し込みができる。
内容はその時によって違うので何回見ても飽きないと思う。
ちなみに私は一般的な本の修復作業も見たかったので
第3木曜のツアーを帰りに申し込んだ。
幸い、まだ空きがあった。

ツアーの後、私1人だけなのに、展示室の説明を一通りして
聞いてもいないのに、使い方まで詳しく教えてくれたRobert。
彼の修復作業室も是非見たいと話すと、
"I hope to see you again soon!"と手を振って
上の修復作業室へと戻って行った。





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