レザーファクトリー


 Bookbindingクラスの先生Geneが
「今度はフルレザーのbookbindingだから、
大きなレザーが必要になる。もしよかったら
このファクトリーを訪ねてみたらいい。
レザーが作られる工程がわかるし、いろいろなレザーを
選んで買うこともできるから。」

Londonの北Northamptonshireに
家族経営しているbookbinding専門のleather factory
Harmatanがある。
早速連絡を取って訪問することにした。
ロンドンから列車で1時間足らずの郊外にその小さな工場はあった。
駅までとってもフレンドリーな社長のMarcが直々に迎えにきてくれた。

その工場は社長の父親と社長の兄弟と従業員4人の合計7人。
社長とセールスマネージャーのLee以外は
無口でいかにも職人らしい。
真剣な眼差しでレザーのチェックに余念がない。

ナイジェリアからすべての
goat skinを輸入している。
届いたレザーを1枚1枚丁寧に
チェックしている従業員。


ナイジェリアから届いた
染める前のレザー。

まだ革の裏は薄く削っていないので
ごわごわしている。

第一工程
First shaving

まず届いたレザーをこの機械に挟んで
フレッシュサイドを上にして削る作業。
0,9mmまで薄く削れる。


削りかす。

第二工程
Wash → retan → dye
1度に60枚のskinが入れられる。

大きなドラムに削った革を入れて洗う。
Leeが言うには、ナイジェリアから届いた
革は、重くするために(重さで値段が決められる)
ダストがたくさん付いてくるから、よく洗う
必要があるそうだ。


洗っている途中の革。
濡れてとても柔らかくなっていた。









その後、Sumacという樹木の乾燥した葉の粉末
を入れて、再度ドラムの中でなめしの作業をする。
この時水を少なめに入れる。
その方が革のgrain(模様)がよく浮き出るから。

次に染めの作業。

この1連の工程(wash-retan-dye)だけで丸2日間かかる。
染めの作業は大変で、職人の勘と入念なチェックが欠かせない。
なぜなら、染料の量のさじ加減で色がかなり違ってくるからだ。
染料は最初は見た目ほとんどこげ茶色でどれも変わらないが
洗い流すと本来の色が出てくる。
だから、ドラムを回しながら、途中革の端を切って
洗って色目を確かめながら調整する。
革は大きさも違うし、その時の温度や湿度によっても
色の出かたが微妙に違ってくるので
できるだけ見本の色に近づけるよう微調整するのが、
職人の腕の見せ所。
このドラム専門の職人は毎回染料の量を記録している。
例えば、薄い空色のレザーとインディゴのような濃いブルーの場合、
どちらもおなじ染料だが、
空色の方は80g、インディゴの方は5kg(どちらも60枚分)
と言う具合だ。しかし、完璧に同じ色を再現するのは
難しいとのことだった。


これがsumacの粉。
ターメリックに似ている(?)








第三工程
horseと呼ばれる台に染め終わった革をかけて、
水が滴り落ちないくらいまで乾かす。

この木の台がHorse。
何枚もの革が掛かっていた。
下は滴り落ちた水で濡れていた。

第四工程
工場の上の方に革を干す金属製のすのこのような板があり、
革が2枚ずつピンと延ばして干してあった。
ここで皺を伸ばす。
季節によって乾く時間はまちまちで、
雨が降ったり湿度の高い冬などはなかなか乾かない。
数日かかることも。

革の上の方の色が薄くなっているが、
そこから乾き始めているのがわかる。

乾いた革を見せてくれるLee。
端を止めていたピンの跡が残っている。
硬くてバリバリ。

第五工程
Hand polishing
乾いた革を特殊な液体をかけて
手で磨く作業。

ポリッシュ用の液体を
拭きかけているところ。

この液体はミルクが原料という。
昔はセミスキムミルクを薄めたものを
使っていたそうだが、
今は工業製品用の使用が認められていないので
このmeliotopという液体を使用している。
ドロッとしている。
「ミルクが原料なら舐めても大丈夫なの?」
との問いに、
「僕は決して舐めようとは思わないけどね。」
とLee。

すべて革は手で磨く。
1日120枚磨いていると言う。

この磨くのに使う道具は手作り。
取っ手の部分は木で、
中にプラスチックの板が入っている。
それに被せているのが、タイヤのチューブの
中の部分。
このヘラにさらに布を巻いて
(この布も3層構造になっていて、
中にゴムが挟んである)それを両手で
持ってこする。

こんな風に革をまんべんなく磨く。
機械もあるが、機械だと重なったところに
ラインができてそこが目立ってしまうそうだ。

「だけど、何だって磨くことはできるんだよ。
こうやって服で磨いてもね。」と言って
自分の服の端で磨いて見せてくれた。
適度な弾力性がある方がいいらしい。

第六工程
Second Shaving
最初の削り機よりも小さい削り機で今度は
3−4回に分けて裏を削る。
ポリッシュした後に削る理由は、
削った段差がほんの僅かでもあると、
ポリッシュした時にその段差を目立たせてしまうから。
 
shaving machineに実際革を挟んで
見せてくれているところ。
「0,7mmまで薄く削ることができるよ。」

これで作業は終わり。
次に革のサイズを測る。

革の裏にはサイズが書いてあり、
6とか7とか、8とか。
すべてsquare feetの表示なので
ピンとこない。
6は6square feetだから1sfの6個分。
1sfが約30cm四方。
数字の右上に書かれた小さな数字は
1が1/4、2がハーフ、3が3/4feet。
複雑な形をした革をどうやって計るのか
とっても不思議だった。
そして、その複雑な革の面積を正確に測るのがこの機械。

台に革を置いて、機械に入れて行くと、
中にたくさん並んでいる歯が革の形を拾って
上にあがったり下がったり。
その動きで計算する。
穴があればそれもきちんと拾ってマイナス
として計算する。




サイズが書かれて販売できる状態になった
革たち。
中にはとても微妙な色合いの
美しい革もたくさん!

これは、Fine leatherとPigmento finishの見本。
ここで言うfine leatherとはnaturalな状態
のレザーのこと。
pigment finishとは、本物のレザーだが、
傷などがとても多くてそのままでは使えない
ような革でも無駄にしないために
他の革のgrainをプリントしたレザー。
右側がプリントした革。

グリーンの革がpigment finish。
表面にプラスチックのコーティングを
施しているため、光沢があり、
見た目も手触りも硬くて
冷たい感じがするが、汚れにくくて丈夫。

聖書によく使われているとのことだった。
たくさんの人の手によって触られるから。
全く同じ模様の革がたくさん必要な場合など
には適している。
4トンもの圧力で型押しするそうだ。
「手間はこっちの方が掛かっているのに、値段はなぜか安いんだよ。」
とLee。

とても狭い工場の中をうろうろして写真を撮っても
誰もいやな顔一つせず、質問にも丁寧に答えてくれた。
約2時間近く工場見学と説明を受けた。

販売用のレザーが収められている棚。
グレードが1から3まである。
普通ブックバインディングには
グレード3で十分。



入った途端に革の匂いがぷんぷんしていた。
本当に目移りしてなかなか選ぶのが
大変だった。

ちなみに1sfがグレード3で£6,15(VAT別)。



帰りも駅まで送ってくれた社長のMarc。
「うちは世界中に顧客がいて、イギリス、ヨーロッパをはじめ、
アメリカにもたくさんいるんだ。日本にも個人の顧客がいる。
有難いことに本当に忙しいよ。
きっと人々は手作りのことがしたいんだと思うんだ。
ブックバインディング、マーブリング、シルバージュエリー、
陶芸・・・どこのコースも結構人でいっぱいだ。
みんな手を使ってクリエイティブなことをしたいんだと思うよ。
仕事ではコンピューターばかりで頭が疲れているからだろうね。」
と話を持ちかけるとどんどん饒舌になっていった。
「職人だったら、使う材料のことをもっとよく知る必要があると
僕は思うけど、ここまでレザーを買いにくるブックバインダーは
とても少ないんだよ。それは変だと思うな。」

「この仕事をする前はどうしていたのですか?」
Marc「この仕事を始める前はロンドンで全く違う仕事についていた。」
「この仕事に代わって幸せですか?」
Marc「もちろん、以前の仕事に比べたらずっと楽しいし幸せだよ!」

この後娘を迎えに行かないといけないんだ、ととっても忙しそうだったMarc。
しかし最後まで気持ちよく見送ってくれた。

夕方とても冷たい風が吹いて来て
また寒さが戻ってきた感じだったが、
心はなんだかぽかぽかとして冷たい風さえも
心地よく感じてしまった。
さて、買ったからにはこの革を使わなくちゃね。




コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

others

search this site: