さようならOld School 1


 いよいよAnn Hechleが21年住んできたOld Schoolを
手放すことになりそうだという。
クリスマス前に契約を済ませる予定が
権利書の下の方に書かれていた
「教会の境内である」という項目に引っ掛かってしまったそうだ。
ほとんどこれまでは無視されていたが、
2年前にこの件で裁判になり、教会に負けてしまった人がいるらしく、
かなりの補償金を支払ったという。
それを気にして、買い手の男性が契約を渋っているらしい。
保険が利くかどうか、その保険をどうするか。

とにかく、引っ越しの準備をしながら
契約が早くできることを祈るしかない。

Annは引っ越し業者にほとんど依頼することにしているが、
仕事関係のマテリアル類だけは自分で整理して行かないと
大変なことになる。
ということで、お呼びがかかった。
彼女の持っているとっても高級なベラムの選別と整理、
こまごまとした道具などを分けて箱に詰める作業を
お手伝いするという光栄に授かった。

Annのおばあさんの代からの
マホガニーのミニ箪笥と
Irene Wellingtonからもらった
ミニ引き出し(ニブ入れ)

さまざまな鳥の羽根のクィルやピグメント、
いろいろなカリグラファーからもらった
バースデーカード、拾い集めたきれいな小石、
18世紀の美しくて繊細なTea pot、陶器の花瓶、
イランで発掘作業に携わっていた時に拾ったBC2000年くらいの
陶器のかけら(Annはこのかけらをスケッチする仕事をしていた)、
イラン旅行の時に見つけたきれいな織物やタイル(学生時代に
1カ月くらい友人と旅した時、お金がなくなって、
売血したお金で買った古いレリーフのタイル)。
ひとつひとつ、思い出のいっぱい詰まった宝物たちの
歴史や物語を聞きながら、
Annの人生がまた少し垣間見えた気がした。

Margaret Daubneyの誕生プレゼント

とっても繊細なローマン・キャピタルで
カラフルに書かれた
コンチェルティーナ・ブック



「このミニチュアのブックはMargaret Daubneyがくれた
Birthday presentなのよ。Margaretは61歳で残念ながら
亡くなったの。」

Old Schoolで過ごす時間もあとわずか。
Annは日が陰ると、リビングルームのいたるところに
キャンドルをともし、暖炉に薪をくべた。
なんとも言えない雰囲気が漂う。
「ほんとうに私はこの家が好き。この家をきっと
恋しく思うでしょうね。でも・・・・もう次の段階に
進まなければならないわ。」
ラジオのBBC3からはモーツァルトが流れていた。
毎年元旦から1月12日までの2週間足らずの間、
24時間ずっと、このラジオ番組では
モーツァルトの全作品を放送するという。
Annはクラシック音楽が好きで、
特にモーツァルトは大好きだそうだ。
「たった1人の人間がこれだけの曲
ー交響曲,室内楽曲から、ピアノソナタやオペラなどーを
たった35年の人生で書いたなんて!信じられないわ。」

Old Schoolの広くて天井の高いリビングに
モーツァルトの交響曲が溢れていた。
まるでオペラハウスで聴いているかのような
重厚な響きが身体を包みこむ。

階段の下の丸テーブルの上に
飾られた石の仏像


暖炉の上に飾られているのは
Annが好きなPiero Della Francescaの絵

キャンドルの灯りで薄暗い部屋は
ラジオを点けていない時はとても静かで、
夕食前はワイン片手に暖炉の前に座って、
Annとパチパチと燃える炎を見つめてひと時を過ごした。

AnnがGeometryの勉強のために
作った立体の多面体も
「これは持っていけないわ」と
暖炉にくべられた・・・・


 


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