Veniceの休日―夜編その2

  最初は明日の朝と言う話だったが、
「明日は結婚記念日で出かけるから
それなら今から行こう、夜のヴェネチアは美しいんだ。」
早速2人で彼の自宅を目指して歩き始めた。
もう夜の7時を過ぎ、夕闇が迫り始めていた。
Veniceは狭いので、そのギャラリーから島の反対側にある
彼の家まで歩いても30分ほどだと言う。
途中運河をゴンドラで渡り中心から少し離れた
彼の自宅の前に辿り着く。
5階建ての最上階に彼の家はあった。


Claudioの部屋からの眺め。
街の光が運河に反射して美しい。
Claudioは家に入ると、まず部屋の
明かりをつけずに、窓の外の眺めを
楽しませてくれた。
そのあとしばらくして明かりをつけた。



着替えを済ませ、頭に着ける懐中電灯を持って、
さっそく家の下につないであるSandoloへ。
水色のとてもかわいい小舟だった。
「これは古くて70歳くらいなんだ。」
そんなに古く見えないくらいちゃんと手入れされていた。
とっても大切にしているのがよくわかった。

まず陸の上で、基本の漕ぐ動作を習う。
ゴンドラと同じ要領で、1本の長いオール(3mくらい)を
船の片側のforcola(フォルコラ)にひっかけて漕ぐ。
ボートの前後にフォルコラは付いていて、
後ろで漕ぐ人は舵取りの重要な役目もある。
私は前の左側に付いたフォルコラに長いオールを掛ける。
肩幅で両手でオールを持ち、左足を下げて右足をオールの下の位置に。
身体は斜めに前のめりになる感じで、前後の足で重心移動をしながら
オールに体重をかけるようにして漕いで行く。
最初はぎこちない動きだが、とにかく実際に水の上にでて
体験してみるしかない!
10回くらい陸上で練習して,早速水上実技だ。
海にもここ10年近く行っていないのに、運河でいきなりボートを
それもSandoloを漕ぐなんて、信じられない。
不安になる暇もなく、必死に習った動きで漕いでいた。

ちょっとオールさばきが乱れると、
フォルコラからオールが外れて水の抵抗に負けてしまう。
オールには裏表があり、反対になるとオールが壊れるという。
オールの表(Vの字に木が継いである面)を上に、水面とオールが
平行になっている様子がニュートラルの状態。
オールを押しだす時に手首をぐっと持ちあげて、
オールが30度から45度くらい傾いて水に抵抗を与える。
「90度はトップレーサーの角度だ。」
確かに90度(垂直)にオールが傾いたらすごい抵抗だ。

「僕はカリグラファーはSandoloを漕ぐのも上手だと思うんだ。」
そ、それって、EwanとかMonicaだったからじゃないの?
確かに、この動きは力ではなく、バランスやなめらかな重心移動
といったダンスやリズムの要素が多いと思った。
もとバレエダンサーのEwanが上手いのは納得。
カリグラファーの端くれである私はもう必死で漕ぐことに集中した。

Grand canalに出ると、広くて波も高く、たくさんの船が行き来していて
ちょっと緊張した。大きい観光船などが近くを通ると、
その波で大きく揺れた。
道路と同じ、譲り合いながら、よけながら進んでいった。
Claudioは見事な舵さばきで、初心者の私のオールさばきにも
動じることなく進んで行った。
そして狭い路地のような横町に入っていった。
Veniceはその時改めて思ったのが、運河の幅がとても狭いということ。
小さなボートですら離合するのは困難なくらい。
とても狭い路地のような運河に入った時、
私のオールが壁にぶつかりそうになった。
「オールをしまって座っていいよ。」
長いオールを引き上げ、先を船の先頭に向けて置き、
船底に座った。
後ろではClaudioが右側で舵を取りながら船を進めて行く。
交差点や横道がある手前では
「オーエッ!」
と大きな声で知らせる。クラクションの役割がこの掛け声。
ちょっと狭い運河に入ると
さっきまでの喧騒はうそのように静かになった。

「ヴェネチアの本当の美しさはね、運河から眺めないと
分からないんだよ。なぜなら、当時の建物は
運河から主に出入りしていたから、
建物の正面が運河の方を向いているんだ。」

オレンジ色の街灯は、
水面に歴史ある建物を映し出して、
音のない水面下の世界を見ていると
どっちが現実でどっちが影だかわからなくなりそうだった。
時間が止まってしまったような気がした。

「Gondolier(ゴンドラを漕ぐ人)は世襲制がほとんどなんだ。」
へー、ゴンドラの世界も匠の世界なんだ。なんだか歌舞伎みたい。
「去年歴史上初めて女性のゴンドリアが誕生したんだけど、
彼女の父親もゴンドリアというわけだ。」

その話を聞いてからというもの、
ゴンドラを漕ぐ人を見る目がちょっと変わった。
彼らはプライドを持ってこの仕事をしているんだ。
親から受け継いだこのゴンドレアと言う仕事を。













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