Peter Hallidayのクラス

 その日、私は午前4時41分のバスに乗り、
Euston駅へと向かった。
Tube(地下鉄)の始発は5.27で、6.03発の列車に
間に合わないからだ。
Euston駅はロンドンの街の中心部に近い、British Libraryの並びにある、
ロンドンから北の方面へ行く列車の発着駅だ。
その日はカリグラフィー友達の通うクラスにゲストとして
参加できることになり、Birminghamから少し先の
Lichfieldという美しい街を訪れた。

地元の人の話では、イギリスでWalesの次くらいに小さい(?)
街という話だったが、古い教会の尖塔がいくつも空にそびえる様子が
どこからでも見える、のんびりとした地方都市のたたずまいに、
ほっとする思いだった。
Lichfield cathedral8世紀ごろ建ったという
Lichfield Cathedral

Ann HechleのWSの時に知り合って、意気投合したManishaは
インド出身で、留学していた10年前にドイツ人と知り合い、
今は結婚してロンドンに住んでいる。
イギリスの大学でInternational relationsの博士号を取得し、
4年前にカリグラフィーと出会い、今はカリグラファー
を目指して、日々カリグラフィーの研鑽に励んでいる。

彼女の最初の先生がPeter Halliday。
Peter Halliday今年70歳。
Sheila Watersの学校の後輩にあたり、
Sheilaと同じ先生にカリグラフィーを
学んだそうだ。

日本でもカリグラフィーの本で結構知られていると思う。
私も彼の本はずいぶん前に購入し、一体どんな人なのだろう、
とずっと思っていた。
だから、今回の訪問も楽しみにしていた。

Peterが教えているクラスは12〜13名くらいの
主に地元の生徒(男性は一人)で構成されていて、
遠くから列車で通っているのはManishaだけだ。
そのほとんどがリタイア組。
初心者から経験者まで幅広く、
その日はゴシックの説明をしてくれた。
ゴシック体の基本ストローク
の書き方を説明するPeter

Peterのような人が、初心者向けの
ゴシックのストロークの書き方を説明しているのを
見るのはなんだか不思議な感じだった。
彼は美しいイルミネーションの作品が有名で、
依頼の作品も数多く、作品は図書館などにも収められている。

しかし、週に1回もしくは月に2回程度の
書体中心の定期的なカリグラフィーの教室
(こちらではAdult educationと言っている)
を継続することは非常に重要なのである。
何年か習ってある程度の基礎ができている人ならまだしも、
定期的な教室には通わず、
ワークショップに1カ月か2カ月に1回参加して、
テクニックなどのみを楽しむというカリグラファーも
少なくないらしい。
もちろん、どういう楽しみ方をしても
いいのだけれど、そういう人たちばかりだと
結局深いところまで掘り下げた内容を
教えるのが難しいというのが
知り合いのカリグラファーたちの
意見だった。

そういう意味ではPeterが地方都市で
このような定期的な教室を教え続けていることは
とっても意義のあることなのだ。

彼は私が見学に来るということで
特別に彼の作品のスライドショーをしてくれた。
また、彼の作品の習作(本物は図書館にある)を
持ってきて解説しながら見せてくれた。
制作下書きノートや
試し書きの作品など

それは素晴らしいブックで、
30年以上も前に、まだ珍しかった和紙を使って、
イスラムの文様をモチーフにした
とっても不思議で細かいデザインの
ブックだった。
ページのあちらこちらに
トリックのように透かし模様が入っていて、
文字はすべて筆で書いたという。
筆の先をカットしてフラットにしたものを
用いたそうだ。
とても筆で書いたとは思えなかった!
下のオレンジの頁の上にくる頁

試し書き用なのに、すごい完成度!


10時から15時まではあっという間に過ぎ、
最寄りの駅までPeterが送ってくれた。
とっても気さくで親切な人だった。

Manishaは最初の3年ほどこの近くに住んでいたが、
ロンドンに引っ越したので、今は通っている。
列車で1時間半から2時間もかけてカリグラフィーの
クラスに通う人はおそらくイギリスにはいないと思う。
なぜなら、イギリスはカリグラファーの宝庫だから
そこまでしなくても、近所に教えてくれる人は
たくさんいるから。
ましてや、ロンドンに住んでいればいくらでもクラスはある。
でもインド人の彼女はこういう。
「一度ひとりのマスターについたら、インドではめったなことでは
マスターを変えないのが普通なのです。」
ちょっと日本人の感覚に似ているかも、とも思った。




コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

others

search this site: