インドのカリグラフィー1

 Devanagariという書体名を聞いたのは
それが初めてだった。
インドのカリグラフィーのWSがある、と言う話だけで
気軽に申し込んでいた。
友達のManishaは誘っておきながら、
ドイツへ引っ越してしまったために
来られなくなってしまった。
そして、前日にあわててWS会場となる
"The Bhavan Centre"を調べる。
そこはインドの文化や芸術を体験したり学んだりする
ロンドンのインド文化センターのようなところだった。

インド人のManishaが今年の初めにこの話を持ってきて、
とっても強く誘うので、まぁそれもいい体験かも、
と思って6回分すべて申し込んだ。
そしたら、彼女は急に夫の仕事の関係で
ドイツへ3月に引っ越してしまった!
そして、当日、2時間近くかけてバスを乗り継ぎ、
行ったことのないロンドンのWest Kensingtonエリアに到着。

中はインドの香りがぷんぷん漂うまさにインド文化の
発信地という感じだった。
中にいる人もほぼ100パーセントインド人だ。
インドの踊りのレッスンがちょうど行われていた。
とても面白い足の動きと手の形、かなりハードな踊りだ。

そしてそこでは、今回のWSの講師のAchut Palavの作品展も
2階のギャラリーで開かれていた。

広くて明るい素敵なギャラリーだ。

今回はAchutと一緒に
Sunita Khedekarという若い女性の
アーティストのアクリル画も一緒に
展示してあった。
すべてガネーシャの絵だ。


Achutの作品はすべて白と黒で
すこし赤と金色も入っていた。
Sunitaは青、緑、赤、オレンジなど
鮮やかな色遣いでモダンなガネーシャを
描いていた。





彼がAchut Palav。
Mumbai(もとボンベイ)で
カリグラフィーの学校を運営しているという。
生徒は子供から大人まで250人ほどいるそうだ。
学校の様子をビデオで見せてくれたが、
すごくパワフルなカリグラフィーだった。
巨大な紙の上にのって、裸足にインクを塗って、
踊りながら紙の上にマークを付けたり、

両手で同時に書いたり(文字かどうかは不明)、
大勢で一斉に同じ紙に書いたりと、まるでインドのボリウッド映画を見ているような
興奮とパワーを感じた。
インド人って、パッション全開!なカリグラフィーを書くんだ!
「文字は美しく書くのではなく、あなたの心や魂を表現するために書くもの。
そうでなければ意味がない。」
とWSののっけからそう断言する辺りはさすが。

しかし、最初は基本が大事。
ペンは45度に傾ける。
しかし、Western calligraphyの45度とは
逆の向きなのだ。

私の他に知り合いのカリグラファー(イギリス人)
が2人来ていた。
あとの10名はインド人。
文字を全く知らない私たちは
読めない文字を書く辛さを味わうことになる。


ギャラリー会場の一角にテーブルを並べて
Devanagariというスクリプトを習った。
専用のペンと専用のGraph paper(方眼紙)
とお手本が渡され、1人1人回ってAchutが
書いて見せてくれた。


デモンストレーションの文字。
Devanagariはヒンディーとサンスクリット
の両方に共通している書体。
文字は一緒だが、サンスクリットは昔の
言葉、ヒンディーは今の言葉。
参加していた他のインド人の中には、
イギリスで生まれ育ったためか、
なんとか少しわかる程度、と言う女性も。

講師のデモ。このようにフローリッシュを
自由に付けることもできる。

Happy Birthdayを書いたら
こんな感じに。
上はペンできっちり、下はポインテッドペンで
自由なハンドライティングで書いたもの。

2時間はあっと言う間に過ぎ、慣れない逆45度で書いたので
右手がひどく疲れた。
あと5回ある。どのくらい書けるようになるのだろうか。




Royal wedding関係のカリグラフィー

 結局今回のRoyal Weddingの招待状は誰が書いたのか
今のところ情報は入ってきていないが、
エリザベス女王の"Instrument of Consent"
「結婚許可証」を書いたカリグラファーはすぐに判明した。
イギリスでカリグラファーとして第一線で活躍中の
Timothy Nordだ。

Timothyはカリグラフィーの本"The Art of Illuminated Letters"
等の著者でもある。日本でも人気のある本の1つだ。
彼はSSIとCLASの両方のフェローでもあり、この前開催された
SSIの"Lay member's Day"ではスピーチをしたという。
(私はあいにく出席しなかったので後から聞いた話)
彼の作品はあちらこちらで目にする機会があり、
いつ見ても、緊張感溢れる仕事ぶりに圧倒される。
その伝統的で美しい、職人的な仕事ぶりは、中世のカリグラファー
をさらに洗練させたようなもので、ギルディングやヘラルドリーを
得意としているようだ。

「結婚許可証」の写真は最初新聞で見て、
「これは絶対にカリグラファーによるものに違いない。
それも、SSIかCLASのフェローの誰かの手によるものだ。」
とすぐに感じた。画質の悪い新聞の写真でも、それくらい
その作品の完成度は高かった。

残念ながらこの画像くらいしか
いい画質のものが見つからなかった。
ちょっと不鮮明ですが、参考までに。

もしもっと大きく見たい方はInstrument of Consentで
検索してみてください。

イギリスでカリグラファーとして食べていくには
伝統的な作品が書けることは必須のようだ。
ヘラルドリーやギルディング、マップなど
緻密でちょっと保守的な作品がまだまだ
好まれる傾向にあるようだからだ。
そうでなければグラフィックデザイナーとして
ロゴやタイトルデザインなどを書くという手もある。
Cherrellは結構斬新なデザインを好むが、
コミッションの作品はあくまでも
依頼主の好みが優先なので、
「一番面白くないデザインと色を選ぶのよ。」
と依頼作品を教室で見せながら、この前話していた。
「私はこのもっと明るい色の、動きのあるデザインの方が
好きだったんだけど。」

カリグラフィーで生計を立てるのはなかなか容易ではないなぁ
と彼らの超職人的な作品を見るにつけ思う。







Annの親友たちと小旅行−Earth pigment WS編

 この日はいよいよ今回の本来の目的である
Earth Pigment workshop。
去年この話を聞いたときからずっと楽しみにしてきた。
前日はワクワクしてよく眠れなかったほど。

引き潮で川底が出ていた。
Fremington quayという場所に車を止めて
川に沿って歩いていった。

ここはBideford bayに流れ込む
River Tawの河口の近くで、
川岸にある地層でearth pigmentの
採集が行われた。

地層が隆起してカラフルな縞模様を
見せている。

このいろいろな色の土を採取して
持って帰った。

講師のPeterによると、
この川岸の地層は3億5千万年前にできたという。


持ってきた容器に次々といろいろな
色の土を採取する。

さまざまな色や質の違う土の縞模様は
見るだけでもとってもきれいだ。

1人で夢中になって採取していると
みんな遠くの方へ行ってしまった!

「こっちにはもっとすごいのがあるよー!」
とPeteの呼ぶ声が。

丸い石が見事に真っ二つに割れていた。
これは石に入ったヒビに水が入って、
氷河期にその水が凍り、
石を割ったのだそうだ。


この地層の模様はとっても不自然。
縦に白い線が入っている。

Peteが説明。
「この白い線はクオーツ(水晶)で、氷河期に
表面にヒビが入ってその隙間に入り込んだものが
このように縦の模様として残っているんだ。」


ぐにゃりと曲がっている。

午前10時過ぎから始めた採集作業は
12時半でおしまい。
まだまだ採りたい気持ちを残して
河口を後にした。

帰ったら楽しいランチタイムが待っていた。

ちょうど大学から休暇で戻ってきていた
Peteの息子も加わって、一緒にランチ。

WS会場には講師のPeter Wardの作品や
彼がこれまで採集してきたさまざまな
Earth Pigment、ピグメント作りに必要な
道具などが並んでいた。

オーストラリアの特別な赤いピグメントも。
アボリジニしか入ることのできない
聖地にあるという土で、特別に分けてもらった
そうだ。
そんな貴重な土も彼は私たちとシェアしてくれた。




Earth pigmentで描いたPeterの作品

早速採取してきた土を砕いて、
mortar & Pestle(乳鉢と乳棒)
で細かくして、さまざまな糊を使って
絵具状にする。
ただの水、linseed oil(アマニ油)、卵の白身、
黄身、PVAなどを試した。


採取した土とPeterの土を使った
Hilaryの描いた絵。

Yvonneは細かい色見本のようなものを
作っていた。

机いっぱいに広げてまるで子供のように
楽しんでいるJude。

土の色って見ればみるほど
いろいろあってきれい。

講師のPeter Ward.
彼のサイトには彼の作品がたくさん出ている。
今彼は大学のマスターコースを取得中で、
環境問題とアートを結びつけた内容で
研究中。







Ann Hechleの新しい生活2

 Annの家の近くに昔からの親友2人が働いている
スタジオがある。
絵画と額の修復のスタヂオだ。
KateとIvonneは2人ともアートカレッジを卒業し、
修復の仕事にずっと関わっている。
いわゆる職人である。

ここが作業をしているスタジオのある
古い水車小屋。
約1000年前に建てられたという。

広くて天井の高い部屋には
所せましと大小さまざまな額縁や
絵画や修復作業用の道具などが
置かれていた。
巨大な絵画のキャンバスを裏張りできる
装置もあった。

大きな作品も修復できるよう、
大きなイーゼルで作業。

とても古くてもろくなった麻のキャンバスは
特殊な技術で新しい麻布に貼り替えなければならない。
Kateはその技術をもつ、おそらくイギリスではただ1人の
職人に仕事を依頼してその額が戻ってきたところだった。


これがその額。麻布がかなり薄くボロボロに
なっていたが、裏から新しい麻布を貼って
やっと絵画の修復ができる状態になった。

この技術はpasteのみを使って貼るとても難しい
技術だそうだ。けっしてケミカルなものは
使わないとのことだった。
Kateはこの技術を持たないし、これからも
習得する予定はないという。学ぶのに何年も
かかるから。

机の上にはありとあらゆるピグメントが
ところ狭しと並んでいた。
目がくらくらしそうだった。

作業が終わったばかりの額を見せてくれる
イボンヌ。

Gold leafの実演を見せてくれた。
カリグラフィーのGildingと同じだ。
金箔は額によく使われている。

この液体はrabbit glue(にかわのようなもの。)
それに、古びた感じを出すための色がついた
粉を入れて灰色がかった色となる。


修復が終わった額。
彼女自身どこを修復したか分からなくなるほど
上手に修復されていた。

額修復専用の道具棚。
実にさまざまなものが利用されていて
興味深かった。
ピグメント、糊、手作りジェッソ(ウサギの膠と
石膏を調合したもの)、古びた色を出す粉、
筆、などなど。
ヨーグルトなどの小さな容器はとっても便利!
と言っていた。


膠を湯煎するための鍋。

2人とも、Ann同様ずっと自分の腕(技術)で生きてきた独身だ。
仲良しの友達と同じスタジオで仕事ができるなんて
素敵な環境だな、と思った。


Ann Hechleの新しい生活1

 3月1日についにAnn Hechleは長年住み慣れた
Old Schoolを後にして
友達が多くいる、Bathの市街地に引っ越した。
「最後に私がこのOld Schoolを離れる時に
この家は崩れてしまうんじゃないかって気がするのよ。」
と常々言っていたAnnだったが、
Old Schoolは崩れ落ちることもなく、無事に引き渡しができた。
それくらい、あちらこちらにガタが来ていた家だった。
でもきっと手直しをしたら、また新しくよみがえるのだろう。
こちらの家は200年300年、すごいものは1000年前に
建てられたというものも、手を入れて住み続けている。

そして、今度Annが新たな人生をスタートした家とは、
なんと1930年代に建てられたというモダンな家。
彼女としては、ジョージアンかビクトリアンの家に
住みたかったようだが、どれもあまりいい状態では
なかったらしい。
たまたまついでに見た家がここで、その小ぢんまりとして
明るく、庭やガレージなどがちょうど理想的な広さの家に
ひと目で気に入ってしまったらしい。

この赤いドアは別の色に
塗り替えるわ、とAnn.

表の庭に咲く、鮮やかな黄色の
スイセンもちょっと気に入らないらしい。
鮮やか過ぎる色よりも、抑えめの色が
好みのAnn。

そして、引っ越しから1カ月半後、
私は彼女の新しい家で荷物の片づけなどを手伝っている。

裏庭で夕食を摂るAnn。
日が長いので夜7時を過ぎても明るい。
とにかくこっちの人は外で食事をするのが好きだ。

ガレージに埋もれている段ボール箱から
仕事関係(カリグラフィーやアートや詩集)の書籍を
2階の書斎に運び、本棚に並べたり、
庭の芝をはぎ取ってOld Schoolから持ってきた
花やイチゴを植えたり、畑の準備をしたり。

びっしりと生えた芝をはぎ取り
イチゴを植える準備をした。

ここがAnnの野菜畑となる。
Old Schoolから持ってきた本棚の板を
再利用して、畑の通り道に。
ちゃんと自分で木が腐らないための
塗料を塗っていた。

久しぶりに土いじりで汗をかいた。
草の青臭いにおいと土の匂いが懐かしかった。
Annはここでも野菜を自給しようと思っているらしい。

庭の奥にひっそりと置かれていたのは、
Tom Perkinsのレターカーヴィング作品。


裏庭からの全景。
セミアタッチメントの家の隣人には
まだ会ったことがないらしい。
近所の人は親切な人が多く、
とってもいいコミュニティーだと言って
喜んでいた。

Bath駅からバスで15分程度の閑静な住宅街。
歩いて5分くらいのところにすべて
郵便局、八百屋、肉や、雑貨や、スーパーなどがあり、
車がなくても十分暮らしていける。
Bathの街中まではバスで行くので、最近はめったに
車を運転しないという。

理想的な家と環境で、とっても幸せそうなAnnを見て、
こころからほっとした。



Old SchoolのFarewell party

 最終日の日曜日は、
Bathなど近郊に住むお友達を6名招待して、
この家とのお別れ会のランチパーティーを
Annは企画していた。

私は朝から薪の準備と、鳥の餌やり、
(裏庭の木の枝に小鳥たちの餌を入れる容器が
つるしてあって、それにピーナッツや雑穀を入れ、
古くなったパンをちぎったものなどを地面に
蒔いてやるのが毎朝の日課)
コンポストへ生ごみ運び、
入口の掃除、部屋の掃除などを担当した。

入口に積み上げた薪

リビングのテーブルにもう一つ小さいテーブルをつけて
8名が座れる場所を作る。
部屋が広いのでスペースに問題はない。
アンティークの椅子もあちこちから集めて
8名分揃った。

「暖炉に薪を上手に組んで、火が付きやすいように
準備をしておいて」とAnnに頼まれた。
ウーン、これってなかなか難しい。
新聞、小枝と小さいものから順番に下から積み上げて行く。
よく乾燥していればあまり問題ないが、
イギリスの冬は湿っていて、薪はなかなか乾燥できない。
一発で火がちゃんと付くにはかなりの腕が要る。
11時過ぎに最初のお友達が到着。
その中に田舎の大きなお屋敷に住んでいらっしゃるご婦人がいて、
薪の扱いには慣れているようだった。
その人が薪の面倒を見てくれたので暖炉には無事に
火がパチパチと燃えだした。

やがてみんな揃ったころには
暖炉の前の椅子に腰掛けてワイン片手に歓談が
始まっていた。

このメンバーはカリグラファーではなくて
いろいろな関係のお友達だった。
瞑想会のお友達や、
ペインティング、織をする人も。


食事はAnnのお手製のサーモンのカナッペ、
スパイシーヨーグルトソースに浸かったチキンとポテトとサラダ。
デザートはフルーツカクテル、お友達の手作りケーキなどなど。



フルーツカクテルにヨーグルトをかけて。

お友達が焼いてきたミンスパイ。

中にはたっぷりのフルーツが。


食事が終わり、暗くなってきたリビングに
20本以上のキャンドルをともして、暖炉の前で
歓談の続き。

The Old School.
これで見収めかも、と思いながら
シャッターを切る。

お土産に、Annの畑で育てたアーティチョークの根を
たくさんいただいた。
21年間コンポストの肥料だけで作った
真黒いほくほくの土で育った野菜たちは
どれもとても美味しくて、発育もよかった。
その畑ももうおしまい。
「いくらでも掘り起こしていいわよ。持てるだけ持って帰ってね。」
アーティチョークの花の部分は食べたことあるけど、
根っこは初めて。ジャガイモに似ているが・・・・?
スーツケースに入るだけ詰めたらすごく重くなった。
茹でたりスープにしたりするらしい。
どんな味か楽しみ。

その日の夜の列車でロンドンへ戻った。
駅まで送ってもらう車からは、
地平線のすぐ上に大きくオリオン座が
昇ってきているのがちょうど正面に見えていた。
なんだか久しぶりに見るような気がして懐かしかった。
 


さようならOld School 3

 Glastonburyは夏に開催される音楽祭で有名らしい。
私は友達やAnnから、スピリチュアル的な場所として
聞いていたので、以前から気になっていた場所だった。
初めて行ったのは去年の11月。
風が強くて、その日も寒かった。

前回訪れた時の画像。

今にも雨が降り出しそうな
厚い雲のかかった風の強い日だった。

Annと高度150mほどの丘の
頂上目指して登った。

頂上には昔の教会の塔がその姿を
とどめている。
ちょうど頂上に着いたころ、
厚い雲の隙間から日が射してきて、
昔見た風景画のような光景が広がった。

この丘からの眺め。
晩秋の紅葉が美しかった。

入口にあった看板。

2回目のこの日はお天気がよく、雨上がりの空に
とても美しい虹が目の前に現れた。
それも端から端まで地平線に半円形がくっきり見えるような。
どんどん色と形がはっきりしてきて、
前方のGlastonburyの街の上に、そしてシンボル的な丘の
Torの上にかかるその虹はまるで
「ようこそ、明るい希望の世界へ!」
と私たちの明るい未来を歓迎しているゲートのようだった。

虹の下に着いたころ、虹は見えなくなっていたが、
街は前回に比べて人通りも多く、とても賑わって見えた。
小さな町のメインストリートは1km足らずだが、
両側には書店、古本屋、クリスタル、エスニック系の雑貨店、
ちょっと裏通りに入ると、タロットカードなどのさまざまな
セッションをするところが数えきれないくらい並んでいた。

エンライトメント(悟り)
という名前のお店。


メインストリートにあった看板
いろいろなスピリチュアル系の
セッションメニューが書かれている

ローカルのサイダーやホームメイドのケーキと飲み物がある
カフェやパン屋さんも。
ある書店にはいると、店の中の小さなテーブルで
タロットカードをしていた。
お客さんが回りにいる中で、大きな声でいろいろと
クライアントにアドバイスしているのだが、
2人とも全く気にしていないようだった。
「人が回りに大勢いる中で、よくあんな話ができるわね。」
とAnnもびっくり。

3−4件の書店に入って、カレンダーや古本を買った。
ヨガやヒーリング、さまざまな宗教、タロットカード、
ネイティブアメリカン関係、自給自足や農に関するものなどなど。
東西のあらゆるナチュラル系、自然志向系などその品ぞろえは
驚くほど。本屋めぐりだけしても1日や2日じゃ見切れないくらいだ。
その上とってもきれいなクリスタル(石)のお店もたくさん。

暗くなる前に帰りたかった私たちは、
4時過ぎには街を出た。
Annは安全運転ながらもすごい勢いで飛ばして
(こっちの法廷速度は日本よりずっと早いのでそう感じる)
1時間足らずで帰りついた。
その日は簡単に食事を済ませ
8時半にはそれぞれの寝室へと引き上げた。

起きるのが早い分ベッドに入るのも早い。
9時前にベッドに入るなんて小学校以来かもしれない。



さようならOld School 2

Old Schoolの朝は早い。
Annは5時に起床して、お風呂に入って、
Eメールをチェック。
6時から20分くらいテレビでニュースと天気予報をチェック。
それから30分ほど瞑想をして、7時過ぎに朝食。
8時には仕事に取り掛かる体制が整う。

一緒に過ごした3日間、私もこの時間割で行動した。
まだ夜が明ける前の暗い空に、
Venus(金星)が輝いているのが窓から見えた。
フクロウが鳴いていたらしい(私は聴きそこなった)。

仕事部屋に並べられた段ボールには
番号がふられ、中身の明細をAnnがノートに書いていく。
私は新聞でひとつひとつ包みながら、
内容をAnnに確認しながら詰めて行った。
ときどき、作業を中断してモノにまつわる話を聞きながら。

Annが昔作った資料。
アートスクールで教えていた時に
使ったものらしい。

19歳の時にIreneの厳しい指導のもと、
生まれて初めて取り組んで書いた
プロジェクト作品。
初めてとは思えないくらい複雑な作品。
「とっても難しかったわ」
とAnn。
「完成させるのは不可能かと思ったくらいよ」
Ireneの指導は、生徒に教えるのではなく、
生徒から引き出すことに重点を置いていた。
生徒のもっているものすべてを引きだすまで、
とことん追い詰めるという指導だったという。
生徒はかなり苦しめられたそうだ。
その指導が今のAnnの作品作りを支えているのは
言うまでもない。

3日目の朝、Annはスイミングに行った。
2日に1度近所のスポーツクラブの
プールで泳いでいる。
夜明け前のブルーの空の下、
照明が水に反射してきれいだった。
Annはとっても気持ちよさそうに
1人でゆっくりと水の中を行ったり来たり。
温水プールからもやが立ち上っていた。

私はプール横のロビーで心地よいソファーに身を委ね、
置いてあった新聞を読んでいた。
時々プールサイドに出て、Annの泳ぎを見学。

プールから上がってきたAnnは開口一番、
「いいことを思いついたの。今日はSomerset levelsに行きましょう。」
サマセット・レベルとはバースの南に位置する、とても低いエリアを指す。
海抜がほとんど0で、ずっと昔は海だったそうだ。
水を抜いてなんとか使える土地にした。
「ここ数日ずっと雨が降り続いていたのできっと水が溜まっているはず」
とAnn。
「一か所道路が水没する場所があるの。そこを見に行ってみましょう。」


普段は畑なのに、まるで湖のよう。
その道路はかろうじて水没してはいなかった。
Annはとっても残念そうだったが。
その両側はすっかり湖のような状態に。
本来トウモロコシ畑などだという。
広大な湿原が現れていた。道路と
両側の湖(畑)とはほんの数センチくらいしか
差はなかった。

さまざまな水鳥がたくさん来ていた。
lapwing(タゲリ),
robin(コマドリ),
白鳥の姿も。

小さいながらタイルの模様が美しい
St.Mary's church。
somerset levelsの中にある
Huish Episcopiという村にある。
この近くのMuchelneyには
John Leach(Bernard Leachの孫)
の窯がある。

この教会のステンドグラスの1つは、
バーン・ジョーンズがデザインした。


上の拡大。
バーン・ジョーンズらしい絵。


そばの小さな街に流れる川を眺めながら
ベンチに座ってお弁当を食べた。
Annはいつも出かける時はランチを用意
してくれる。


そのあと、私とAnnのお気に入りの街、
Glastonburyへとさらに車を走らせた。



さようならOld School 1


 いよいよAnn Hechleが21年住んできたOld Schoolを
手放すことになりそうだという。
クリスマス前に契約を済ませる予定が
権利書の下の方に書かれていた
「教会の境内である」という項目に引っ掛かってしまったそうだ。
ほとんどこれまでは無視されていたが、
2年前にこの件で裁判になり、教会に負けてしまった人がいるらしく、
かなりの補償金を支払ったという。
それを気にして、買い手の男性が契約を渋っているらしい。
保険が利くかどうか、その保険をどうするか。

とにかく、引っ越しの準備をしながら
契約が早くできることを祈るしかない。

Annは引っ越し業者にほとんど依頼することにしているが、
仕事関係のマテリアル類だけは自分で整理して行かないと
大変なことになる。
ということで、お呼びがかかった。
彼女の持っているとっても高級なベラムの選別と整理、
こまごまとした道具などを分けて箱に詰める作業を
お手伝いするという光栄に授かった。

Annのおばあさんの代からの
マホガニーのミニ箪笥と
Irene Wellingtonからもらった
ミニ引き出し(ニブ入れ)

さまざまな鳥の羽根のクィルやピグメント、
いろいろなカリグラファーからもらった
バースデーカード、拾い集めたきれいな小石、
18世紀の美しくて繊細なTea pot、陶器の花瓶、
イランで発掘作業に携わっていた時に拾ったBC2000年くらいの
陶器のかけら(Annはこのかけらをスケッチする仕事をしていた)、
イラン旅行の時に見つけたきれいな織物やタイル(学生時代に
1カ月くらい友人と旅した時、お金がなくなって、
売血したお金で買った古いレリーフのタイル)。
ひとつひとつ、思い出のいっぱい詰まった宝物たちの
歴史や物語を聞きながら、
Annの人生がまた少し垣間見えた気がした。

Margaret Daubneyの誕生プレゼント

とっても繊細なローマン・キャピタルで
カラフルに書かれた
コンチェルティーナ・ブック



「このミニチュアのブックはMargaret Daubneyがくれた
Birthday presentなのよ。Margaretは61歳で残念ながら
亡くなったの。」

Old Schoolで過ごす時間もあとわずか。
Annは日が陰ると、リビングルームのいたるところに
キャンドルをともし、暖炉に薪をくべた。
なんとも言えない雰囲気が漂う。
「ほんとうに私はこの家が好き。この家をきっと
恋しく思うでしょうね。でも・・・・もう次の段階に
進まなければならないわ。」
ラジオのBBC3からはモーツァルトが流れていた。
毎年元旦から1月12日までの2週間足らずの間、
24時間ずっと、このラジオ番組では
モーツァルトの全作品を放送するという。
Annはクラシック音楽が好きで、
特にモーツァルトは大好きだそうだ。
「たった1人の人間がこれだけの曲
ー交響曲,室内楽曲から、ピアノソナタやオペラなどーを
たった35年の人生で書いたなんて!信じられないわ。」

Old Schoolの広くて天井の高いリビングに
モーツァルトの交響曲が溢れていた。
まるでオペラハウスで聴いているかのような
重厚な響きが身体を包みこむ。

階段の下の丸テーブルの上に
飾られた石の仏像


暖炉の上に飾られているのは
Annが好きなPiero Della Francescaの絵

キャンドルの灯りで薄暗い部屋は
ラジオを点けていない時はとても静かで、
夕食前はワイン片手に暖炉の前に座って、
Annとパチパチと燃える炎を見つめてひと時を過ごした。

AnnがGeometryの勉強のために
作った立体の多面体も
「これは持っていけないわ」と
暖炉にくべられた・・・・


 


Richard Kindersley workshop

 カリグラフィー友達のManishaと
Richard Kindersleyのworkshop(工房)を訪ねた。

お隣の家の番号。
もしかしたらKindersley工房が
彫ったのかも?
レンガに彫って金箔を施されている。

RichardはDavid Kindersleyの長男で
ロンドン市内でworkshopを開いている。
今2人の女性が弟子として働いていて
その日いたのはロ―ハンプトン出身のチェコ人で
ここに来て3年目という。

Richardと弟子の女性

私は去年のLetter Exchange LectureでRichardの
話を聞いて以来お会いするのは2度目だが
彼と個人的に話すのは初めてだった。

Lettercarvingは初心者の私と、
一度もやったことのないManishaを
仕事の手を休めて、とても丁寧に案内してくれた。
初歩的な質問にも、きちんと答えてくれた。

工房内に展示してあった
作品

金属をキャストした作品も

2階からみた工房
この部屋はクリーン・ルームと呼んでいた。
石を彫る作業の前のデザインをする部屋。


クリーン・ルームの上にある
図書館。
部屋の3面が本で埋まっていた。
ここで、じっくりと私たちの質問に
答えてくれた。
本当になんでもきちんと答えてくれて、
気がついたら2時間以上たっていた!


隣にある、石を彫る部屋。
クリーン・ルームと同じ広さだが、
大きな石でも動かせるように
天井にクレーンが付いていた。


左の作品は依頼されたもの。
鉄分が多いため表面が赤茶色になっている。

右の作品は文字の向きに合せて
石を回しながら彫ったという。

これはRichardの母親の墓石。
場所の準備が整っておらず、
まだ設置できないらしい。
めずらしい縦向きに彫られた文字。


午後、Manishaとお茶をしながら
Richard Kindersleyと言う人がどれほど親切で
Generous(気前のいい)な人か、と言う話で
盛り上がった。

とくに心に残っている言葉に、
「人生は短いのだから、自分が納得できない言葉は彫らない。
石を彫るのは時間がかかるからね。好きな言葉でなければ
仕事していて楽しくないだろう?」
彼は依頼の作品でも、ほとんど彼が言葉も選んでいるという。
依頼主が選んだ言葉でも、彼が気に入る言葉であることが条件。

「どんなに忙しくても、自分が自由に彫る作品を作る時間は
作らなければいけない。なぜなら、クライアントは私の過去の
作品を見てのみ依頼してくるのだから、自分の自分らしい
作品を作っておかなければクライアントに見てもらうことはできない。」

Richardは東洋の哲学に特に関心があるようだった。
自身もメディテーションをよくするという。
「いつも忙しくばかりしていたら、インスピレーションが
沸かないんだよ。静かにこころを鎮める時間を持つことが
とても大切なんだ。瞑想をしたり、じっと静かに花を見つめたりすることによって
インスピレーションが沸くんだよ。」

「テクニックのためにはクラシカルな文字を学ぶことが一番。
オリジナルな文字なんて、なかなか出来ないものだよ。
99,9%はそれまで自分が見てきたものから生まれるのだから。」

「自分の仕事がComfortableに感じるようになったら危険だ。
常にナーバスな感覚を持つ必要がある。」

「MusicとLetteringにはたくさんのコネクションがあると思う。」

彼は音楽がとても好きなようだ。特にクラシック音楽には詳しいようだった。
カリグラファーもそうだが、音楽と文字の関係は相当深い。

それから、Trajan column よりずっと以前の
碑文(ギリシャ文字)や、もっと庶民的なちょっと崩れた感じの
ラスティック体の碑文など、
さまざまな碑文文字をPCのディスプレー上で見せてくれた。
常に研究をしている、という印象を受けた。

T.S.Eliotやアフリカの原住民の言葉が好きなようで、
よく引用している。

David Johnsも好きで、哲学的で信心深い人柄に魅かれる
と言う。「彼の文字は決してナイーブというわけではなく、
意図的に崩してそのように書いているのだ。」と。

ちなみに以前ここのworkshop出身の弟子の中には
後にタイプデザイナーになった人もいるという。
Lettercarverの仕事は、ほとんどが文字のデザイン
というのも納得。

この後、トラファルガー広場へ行く。
National Portrait GalleryとNational Galleryに
寄った。

夕焼けがきれいだった
トラファルガー広場。

この日、学生デモが暴徒化して
policeが大勢出ていた。
ヘリコプターもずっと上で旋回していた。
歩いていると、
デモが横を通り過ぎていった。

この日の午後から夜にかけて
この辺りは車が止められて
歩行者天国となっていた。

気の毒に、この日車に乗って通りがかったチャールズ皇太子と
カミラ婦人は、学生デモから窓を割られ、車をペンキで塗られ、
カミラ婦人に至っては、棒でつつかれたとも。
ロンドンPoliceの面目丸潰れだ。

後日ラジオでこんな話をしていた。
「だいたい、イギリス国旗を車に立てているのが
間違いなのさ。だからすぐわかってしまう。
どこかのファーストフード店の旗でも立てておけば
絶対にわからないと思うよ!」

イギリスの王室はどこかの国と違って
庶民との距離が近いなーと思った。







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